硬質クロムめっきの皮膜特性
高硬度
硬質クロムめっきは、通常の電気めっきの中では、最も高硬度で、熱処理鋼・窒化鋼などよりはるかに硬度が高い。(Hv 800~1,000)
耐熱性
硬質クロムめっきの熱処理による硬さの変化は、200~400°Cまでは徐々に減少し、400°C以上で急激に減少する。
800°C以上になると通常のクロム金属の値Hv200~300に落ち着く。
これは500°C付近で、電着クロムの結晶がくずれて再結晶化するものによると考えられている。
めっきの水素脆性を回復させるための熱処理は、電着クロムの組織に影響されない200°C前後で行う。
低摩擦係数
硬質クロムめっきの摩擦係数は極めて小さく、一般に使用される材料の中では最小である。
組み合わせ材料 |
静止 |
運動 |
鋼とクロムめっき |
0.17 |
0.16 |
鋼と鋼 |
0.45 |
4 |
耐摩耗性
硬質クロムめっきに要求される最も重要な基本的性質であり、極めて良好である。
めっきの種類 |
2時間ごとの平均摩耗量(0.1mg) |
硬質クロム |
3 |
ニッケル |
12 |
銅 |
17 |
銀 |
20 |
耐食性
硬質クロムめっきは、塩化物以外の化学薬品に対して安定であり、大気中でも10µm以上の厚さを持つ皮膜は比較的良好な耐食性を示す。
離型性
硬質クロムめっきは一般的に離型性が良いとされている。
その理由は、金属が個々にもつ表面エネルギーが他の金属よりも小さいからである。撥水性を例に挙げると、鋼とクロムめっきに水滴を垂らすと、
鋼と水滴の接触角度…40°
クロムめっきと水滴の接触角度…70°
となる。
こういったことからも、クロムめっきは付着しにくく、離型性が良いといえる。